飼うまでのきょうかしょ

成猫の里親になるメリット「大人の猫は懐かない・難しい」そんなことはない!

里親を募集している猫は子猫だけではありません。やむを得ない事情で手放すことになった猫や、保護された大人の猫も多く募集されています。

保護猫を探している方の中には、「かわいい子猫のうちから飼いたい」「子猫のうちから育てないと懐いてくれない」と思っている方もいるかもしれませんが、一度その考えは捨ててください。じつは、里親募集中の成猫(おとなの猫)だからこそのメリットがたくさんあります。

おとなの猫の方が子猫より飼いやすい

ペットとして迎え入れるのに「まだ小さいうちから飼いたい」と思う人は多いでしょう。しかし、忘れてはいけないのが猫の飼育でもっとも大変な時期は子猫の時ということ。ありあまるパワー、興味、抑えきれないイタズラ欲…どれも想像を超えるほど凄まじいです。

一方おとなの猫の場合、そのような大変な時期も少なく、他にも様々なメリットがあります。実際に成猫を引き取ったことがある人や、多くの保護経験があるボランティアの人からも「成猫の方が子猫よりも断然飼いやすい」とよく聞きます。

では、具体的にどんなメリットがあるのか一つずつ見ていきましょう。

①最もやんちゃな時期を終えている


先程少しお話したとおり、猫の飼育でもっとも大変な時期を終えていることがもっとも大きなメリットです。有り余る好奇心を爆発させて危険な状況に陥ることも少なく、安定した飼育が見込めます。

例えば、既に大人の猫はどんなことが危険な行動かをわかっています。子猫の場合、身の危険よりも好奇心が勝ってしまったり、興奮状態から自分でも予期せぬ自体に陥りやすいです。(例えば、高いところで遊んで落ちてしまう等は子猫あるあるです。)また、1歳~6歳ぐらいの猫でしたら安定した運動神経を持っているため、万が一予期せぬ自体に陥ったとしても自ら対処することができます。

また、猫は本来「薄明薄暮性」という夕方から明方にかけて活動的になる習性を持っています。これまで人に飼われていた大人の猫の場合、ちゃんと人間の生活時間に馴染み、ある程度おとなしくする子が多いです。しかし、子猫の場合はまず人間の生活時間になじませるところから始める必要があります。更に、どこにそんな体力があるんだと思うぐらい、夜中や明方に暴れまわることも珍しくありません。

この有り余る好奇心とパワーから子猫の飼育に疲れてしまう里親さんも多く居ます。(実際、私も当初はかなり悩まされました…。)

②どんな性格なのか既にわかっている

人間と同じように、猫にも様々な性格を持っています。常に元気いっぱいな子やおとなしい子もいれば、とても甘えん坊な子、実はとても臆病な子だったり。この性格は、大体1~2歳ぐらいで完成するため、子猫の時ではどんな性格なのかまだ予測がつきません。

もし触られるのがあまり好きじゃない猫だった場合、猫とのスキンシップを楽しみにしていたら少し残念に感じてしまうかもしれません。また、とても甘えん坊で寂しがり屋な猫だった場合、家を空けることが多い人だと猫にとってもストレスが溜まってしまいます。

成猫の場合は既に猫の性格がわかっているため、一緒に生活してからのギャップを避けることができます

③健康状態で気をつけなければいけないことがわかっている

一度保護された猫はまず最初に病院で健康状態のチェックを受けます。そのため、何か病気を持っていないかなどの基本的な情報はもちろん、保護環境でわかった気をつけなければいけないことを予め知ることができます

例えば、ご飯の傾向。猫は使用されている素材やメーカーによって体調を崩してしまったり、軟便気味になってしまうことがあります。そういったご飯事情も、成猫ならば予め対策をすることが出来るため非常に安心です。

また、子猫の場合ですとすぐに検査することが出来ない場合や、母体からの抗体の影響で血液検査をしても正しい結果が出ないこともあります。将来どのような病気になる可能性があるのかわからない場合も多いため、注意が必要です。

④お留守番ができる

成猫の場合、子猫のようなやんちゃな時期も終えているため、ご飯とトイレの準備をしておけば日中相手をしなくても大丈夫です。子猫と比べて体調も安定していますし、本来猫は一日の半分以上を寝て過ごすためとても落ち着いています。

一方子猫の場合、一日に三回の定期的なご飯やこまめなお世話が必要になります。ちょっとしたことで体調を崩し、命に関わることもあるため、お留守番させることは正直難しいですしおすすめしません。常に興味津々、ちょっとしたことでも興奮してしまうため留守番中のイタズラは絶対に避けられないでしょう。

⑤トイレの失敗をしない

猫は本来持っている習性で砂の上にトイレをします。そのため、犬などの他の種類のペットと比べてもトイレのしつけに困ることは少ないですが、それでも子猫の場合はトイレではない場所で粗相をしてしまうこともあります。

成猫の場合はトイレのしつけが済んでいることも多く、更に一度トイレと認識した所以外で粗相をすることもあまりありません。元の飼い主や保護元で使用していた同じ猫砂を用意しておけば、すぐに覚えてくれるでしょう。

⑥賢くて甘え上手が多い

既に人に飼われていた場合、人間が喜ぶ行動や、その逆に怒る行動も自覚していることが多いです。「こうすれば撫でてくれる」とわかっているように、自ら頭を擦り寄せてきたり、膝の上に飛び乗ってくる甘えん坊な一面も成猫ならではです。

成猫だからこそのデメリットもある

おとなの猫を引き取ることには多くのメリットがありますが、その一方でデメリットも少なからずあります。

子猫時代を見れない

既に大人の猫ですので、当然その子の子猫時代を見ることはできません。小さい肉球に頭と体のバランスがあっていないあのぬいぐるみボディを見れないのは少し残念に思うかもしれませんし、子猫ならではのあの愛くるしい時期を一緒に過ごしたいと思うのは当然のことです。

しかし、その子猫らしい期間は一瞬。飼ったことがある人ならわかることですが、大体生後半年から10ヶ月も経てば、「もうこんなに大きくなったのね…」と驚くほど成長します。

脱走の危険がある

元野良猫だったり、外飼いの環境で育ったおとなの猫の場合、子猫と比べて脱走の危険が高まります。環境の変化に加えて、家の中に閉じ込められるという状況は慣れるまで大きなストレスとなり、衝動的な脱走行動に走るケースも少なくありません。

かと言って、適切な猫の飼い方としては完全室内外が推奨されます。慣れるまではお互いに大変ですが、徹底した脱走対策を施したうえで、おもちゃなど他のことでストレスがまぎれるよう万全の対策をとりましょう。

避妊・去勢手術をしても落ち着かないことがある

猫の避妊・去勢手術は子猫のうちに済ますことが推奨されています。これは、最初の発情期を迎える前に避妊・去勢をすることで生殖本能が高まる発情期や、生殖器関連の病気を最大限に抑えられるためです。

しかし、元野良猫だったり、最初の発情期を迎える前に避妊・去勢をしなかった猫の場合、あとから手術を行っても発情期や病気のリスクを最大限に抑えることができない場合もあります。

していない状況と比べたら多少落ち着きはあるものの、猫によっては発情期になると一晩中大きな声で鳴いたり、落ち着かなかったり、脱走を試みようとする可能性があります。

高齢の猫の場合は通院や介護が必要になることも

猫は大体7歳ごろから老化の兆候が見られるようになり、活発さや代謝が低下しはじめます。そのため、老化による怪我や病気のリスクも発生するため注意が必要です。

また、11歳ごろを過ぎると更に腎臓病や関節炎など、健康に対しての心配事が更に増えてきます。

子猫の時期もやんちゃな行動による怪我や病気のリスクが非常に高いですが、シニア猫の場合でも同様にそれらのリスクは高まるため、通院や介護の備えをしておく必要があります。

「大人の猫は懐いてくれない」そんなことはない!大切なのは「時間」

よく大人の猫は懐いてくれないという声を聞きます。しかし、実際はそんなことありません。例え大人の猫であったとしても「環境」と「接し方」、そして「時間」が解決してくれます。

猫にとって最適な環境を整える

猫は周囲の環境が変化することを非常に嫌い、それが大きなストレスに繋がっていきます。新しいおうちで暮らす以上、大きな変化を避けることは難しいですが、飼い主側の用意で出来る限り前の環境に近づけることは可能です。

例えば、使っていた猫砂やごはんの種類は必ず保護元と同じものにしましょう。他にも、好んでいたおもちゃや毛布などがあれば譲ってもらえるようお願いし、出来る限り前の環境に近づくものを用意します。

また、落ち着きやすい環境を作るためにも飼い主側の生活も配慮しましょう。大きな音はたてないようにし、テレビなども避けたほうが良いでしょう。

このように、猫にとって最適な環境を整えてあげることでいち早く新しい環境にも慣れ、やがて飼い主自体にも慣れてきます。

接し方に注意する

一番大切なことは、猫に「この人間はどうやら攻撃してこないぞ」と認識してもらうことです。そのため、引き取ったばかりの猫に対する接し方は特に注意が必要です。

引き取ってから1~2週間ほどは、こちらからの過度なスキンシップはしないようにしましょう。何度も呼び掛けたり、何か大きな身振り手振りをすることも怖がらせてしまうため厳禁です。

もし一度でも「この人間は怖い人間だ」と認識されてしまうと、なかなかその誤解を解くことが難しくなります。

時間が解決してくれる

飼い主側がしっかりと猫に対して配慮を行えば、必ずいつかは慣れてくれます。

そもそも猫は「ネオフォビア」という、新しいものに対して拒否反応を示す傾向を持っています。そして、成猫は子猫と比べてその傾向が強く、受け入れるまでに時間がかかってしまいます。しかし、それも一つの本能であり、どれぐらいの期間で慣れてくれるかは猫の性格によって変わってきます。

早い猫では一週間、平均でも一ヶ月、長くても半年もすれば猫側から打ち解けてくれるはずです。そこを理解し、ゆっくりと仲良く過ごせる日を待ちましょう。

それでも懐かないのは「大人の猫だから」ではなく「そういう性格」なだけ

中には、一年経っても懐いてくれない猫もいます。しかし、それは大人の猫だからというわけではなく、そういう性格なだけでしょう。

猫の性格は本当に様々で、元からスキンシップを好まない性格だったり、臆病な性格だったりすることも十分に有りえます。本来猫は群れで生息することはなく、干渉されることも苦手な動物です。

しかし、長く一緒に生活していく中で必ず信頼が芽生えてきます。体調を崩してしまうことが続かない限り、猫にとってその生活は決してストレスではないため、長い目で程よい距離間を楽しみましょう。

初めて飼育する人にこそ成猫はおすすめ

子猫でも大人の猫でも、どちらもメリット・デメリットがあります。しかし、子猫と比べてかかる手間事前に手に入れられる情報量の差から、初めて飼育する人にこそ成猫を選ぶことをおすすめします。

飼育する上で、絶対的な「大人の猫だからここが駄目」ということはありません。もし、今まで保護猫を探す中で成猫という選択肢が無かったら、これを機に一度検討してみてください。

子猫でも、成猫でも、あなたの手を待っている子が必ずいます。