水はあまり得意でない猫ですが、体をきれいにするのは大好きです。お風呂に入れるときは、ポイントを押さえて入浴させてあげましょう。猫をお風呂に入れる時は、猫を怖がらせない、手早く洗う、しっかりと毛を乾かす、部屋の温度を保っておく、といったことに注意が必要です。
目次
猫とお風呂の関係
猫の祖先は砂漠出身
猫の祖先リビアヤマネコは、砂漠出身です。ですから、今の猫たちも、リビアヤマネコの特徴を受け継ぎ、あまり水を飲まなくても、水分を体内で効率よく利用することができます。
砂漠で生き抜くため仕方なかったこととはいえ、少ない水分で大丈夫な体は、いいことばかりではありません。たとえば、水分をあまりとらない猫の尿は濃縮され濃く、腎臓には大きな負担です。そのため腎臓を酷使する結果となり、多くの猫が慢性腎不全を患っています。
このように、祖先が砂漠出身なため、ほとんどの猫は水が苦手です。なかには海やプールで楽しく遊ぶ子もいますが、そんな水好きの猫はめったにいません。当然お風呂も、嫌いな子のほうが多く、保護猫なら、なおさらその確率が高まります。それでも、お風呂の温度や入れ方を工夫することで、嫌がらなくなる猫もいます。
濡れるのが嫌いな猫
砂漠に暮らしていた猫の祖先のことを、想像してみてください。砂漠は乾燥しているため、あまり体も汚れないし、砂にすりつければ汚れも落ちるでしょう。そして、貴重な水で水浴びをするような習慣もありません。
砂漠の気候は、昼は日が照り付け暑いのに、夜はかなり気温が下がります。体にほとんど脂肪のついていない猫が濡れたまま夜を迎えるのは、死につながるほど危険なことです。祖先の時代から続く「濡れるのは危険」というメッセージが、猫のDNAに組み込まれているのかもしれません。
お風呂の苦手要素は水だけじゃない
水嫌いの猫ですが、お風呂を嫌がる理由は他にもあります。特に苦手なのが、ドライヤーです。猫の耳がピクピクと動いているのを、見たことがありませんか。そんな時、猫はあなたには聞こえない音を探っているのかもしれません。猫は人間の聞こえない音域の音を聞くことができる、とても高性能な耳を持っています。特に高音の音はよく聞こえ、かなり遠くの音を聞き分けることも得意です。
高音で大きなドライヤーの音は、耳の良い猫にとっては拷問のように感じるのかもしれません。また、猫は人間と暮らしていても野生味の強い動物ですから、自然界に無い機械音は苦手です。恐ろしい音を立てながら風を吹き出す機械には近づきたくない、というのが猫の本音でしょう。そんな猫の気持ちを、まずは理解してあげる必要があります。
毛づくろいで入浴効果
そんなにお風呂が嫌いなら、無理に入れなくてもいいんじゃないか、と思う人もいるかもしれません。確かに猫は、自分できれいに毛づくろいをしているし、臭いもそれほどしない動物です。
猫が臭わないのは、肉球以外からは汗をかかないのが理由のひとつ。また、臭いがきついと狩りのとき、獲物に気が付かれてしまいます。そのため、猫は体臭がほとんどしない動物です。さらに、体をなめて毛づくろいすることで、猫は自分についている臭いを消し去っています。
毛づくろいは、臭いを取るだけでなく毛並みを整え、体毛についているゴミや汚れも取り除きます。皮膚から出る細かなフケもなめとるので、皮膚炎も予防できます。さらにいうと、毛づくろいには、体温調節や気持ちを落ちつけるリラックス効果もあります。まさに、人間がお風呂に入るのと同じような効果があるのが、猫の毛づくろいです。
猫にお風呂は必要なの?
毛づくろいする猫は、人間のように、毎日お風呂に入る必要はありません。あまり頻繁にお風呂に入れると、皮膚病の原因となったり、被毛がダメージを受ける原因になったりしてしまいます。猫をお風呂に入れすぎるのは、避けたほうがいいでしょう。
それでも、高温多湿な日本の気候は、砂漠とはまるで違います。特に皮脂が汚れやすい種類の猫や、太りすぎや老化のため自分で体をきれいにできていない猫は、月に1回程度シャンプーが必要です。長毛種の猫も毛が汚れやすいので、月に1度程度シャンプーをして汚れを落としてあげます。あまり汚れが目立たず毛の短い猫は、様子を見ながら3カ月~1年に1度程度、お風呂に入れてあげましょう。
猫の入浴方法の基本
猫をお風呂に入れる目的
人間の入浴には、体を清潔にするだけでなく、体を温めたり、心身をリラックスさせたり、といった効果が求められます。でも、水ギライの猫の入浴目的は、まず体をきれいにすることです。ですから、「入浴」イコール「バスタブにつかる」と、考える必要はありません。
それぞれの家庭の事情や猫の性質に合わせ、「バスタブ」「シャワー」「体をふく」といった方法から選んで入浴させてあげましょう。
お湯や部屋の温度
猫の体温は、約38度と、人間より高くなっています。しかし、人間にはぬるま湯と感じる38度程度の湯でも、猫にとっては温度が高すぎのぼせてしまいます。猫が入るお風呂の温度は、体温より少し低めの30~35度が適温です。
猫は、体温調整が得意な動物ではありません。お湯の温度だけでなく、洗い場や、乾かす部屋の温度にも気を配りましょう。濡れた体で放置されると、体温が下がり体調を崩してしまいます。お風呂で体が濡れた後、乾くまで寒くないよう室温を管理しておきましょう。
猫用シャンプーでの洗い方
猫を洗う時に、シャンプーは必要ない、という意見もあります。あまり汚れていないのなら、お湯だけでいいかもしれません。シャンプーを使う時には、必ず猫用のものを使ってください。被毛の手入れをしたいのか、肌トラブルを防ぎたいのか、それぞれの目的に合った猫用シャンプーを選びましょう。
シャンプーの量が多すぎると、洗い流すのが大変です。ごく少量のシャンプーを、頭からつけ、体の方向に洗っていきます。ただ、顔回りを洗われるのを嫌がるようなら、顔はふいたり、お湯で流したりするだけでもいいです。しっぽや肛門回り、肉球の間など、皮膚の様子を観察しながら手早く洗っていきます。きれいになったら、お湯で良く流してタオルドライします。
タオルドライ&ドライヤーでしっかり乾かす
シャンプーが終わり濡れた猫は、急いで乾かさなければいけません。いきなりドライヤーをかけても乾きにくく、生乾きになってしまいます。最初に、吸水性の良いタオルでしっかりとタオルドライをし、水分をとります。
その後、ドライヤーをかけていきますが、敏感な耳回りは避けて、背中やお腹など面積の広い部分から乾かしていきます。ドライヤーを近づけすぎてやけどさせないよう、風の出ている部分に自分の手を入れながら乾かしていきましょう。
猫を洗う3つの方法(バスタブ・シャワー・温タオル)
バスタブを使った猫の入浴方法
ペット用のバスタブ、または猫が入る大きさの入れ物に36度程度のお湯を張っておきます。バスタブの中でお湯の温度は下がっていきますので、適温(30~35度)より、ほんの少し高めの温度を用意し、手早く入浴させます。深くお湯を張ると怖がる猫も多いので、お腹の下くらいの水位が適当です。
猫をバスタブの中に静かに入れ、体にお湯を回しかけたらシャンプーをつけて洗いすすぎます。シャワーを嫌がるようなら、別のたらいにすすぎ用の湯を準備しておき、手や桶で静かにかけてあげましょう。
猫をシャワーで洗う方法
バスタブの中に入るのを嫌がる猫は、シャワーだけで洗ってもいいでしょう。シャワーの音や水圧を怖がる猫もいるので、あまり強くお湯をかけてはいけません。最初に30~35度程度の温度に調整したシャワーを、皮膚がしっかり濡れるところまでかけてから、シャンプーをしていきます。
体をふいてきれいにする方法
どうしても、お風呂に入りたくなさそうな猫には、温タオルやブラッシングで対処します。まずよくブラッシングをして、皮膚のフケを落とし、被毛のからみをなくしていきます。その後、温タオルで体をふいていきます。
温タオルは、お湯で絞るか、濡らしたタオルをレンジで温めて作ります。やけどしない程度の温度になっているか確かめ、猫の体、目元、口元、お尻、などをふいていきます。仕上げにタオルドライでふきあげ、必要ならドライヤーで乾かします。
ぬれタオルでも嫌がる猫には、人間の手を使う方法もあります。飼い主の両手を濡らし、猫の体をサーッとなでていくと、抜け毛が濡れた手にくっついてきます。何度か繰り返すことで、汚れがとれ、抜け毛対策にもなります。
猫の入浴トラブル解決
お風呂ギライを少しでも無くすには
猫をお風呂に入れようとすると、大暴れして逃げ出してしまう。こんなときは、何が原因なのか考え、できるだけそれを取り除いてあげます。
- シャワーや蛇口から勢いよく出る水が苦手なら、汲み置きしておいたお湯を使う
- バスタブのお湯につけられるのが苦手なら、お湯を減らす、またはシャワーにする
- 猫を怖がらせないよう、優しく話しかけながら手でお湯をかける
- 普段からお湯を張ってないバスタブの中に入れて慣れさせる
- お風呂は楽しいところだよ、と脳に刷り込む(遊んだり、おやつをあげたり)
一番の解決法は、小さい時からお風呂に慣れさせることです。小さい時からお風呂に入っていた猫の中には、入浴するのが大好きで、自分からお湯に入る子もいます。ただ保護猫の場合、大きくなって初めてお風呂に入る猫もいるでしょう。
猫はもともと水が嫌い、そして変化への適応力が低いため、お風呂になれるのは時間がかかります。最初は嫌がっていても、ある日お風呂の気持ちよさに目覚め入浴を楽しむ猫もいます。気長に優しく接してあげてましょう。それでもどうしても無理なら、ブラッシングや体をふくことで代用できます。
ドライヤーの克服方法
洗うのにどうにか慣れても、ドライヤーは苦手、という猫もいます。でも、乾かさないまま生乾きになってしまっては、かえってかわいそうです。ドライヤー時間が短くて済むよう、タオルを何枚か使いしっかりとふきあげ、毛の中に手を入れて風を送り込みながら地肌まで乾かしてあげましょう。