飼ってからのきょうかしょ

保護猫が夜鳴きするのはなぜ?猫の気持ちを見極めて正しく対策

保護した猫が夜鳴きを繰り返し、猫も人間もイライラ不満がいっぱい。ご近所にも迷惑だし、どうしていいのか分からない。こんなふうに猫の夜鳴きで困っているなら、まずは猫の気持ちを理解した上で、その原因を考えていきましょう。

保護猫の場合、特に考慮しなければいけない事情があるかもしれません。我が家の一員として迎えた猫と楽しく暮らせるよう、夜鳴きの原因と対処法を考えてみましょう。

夜鳴きしている保護猫の気持ちを見分けるヒント

猫が鳴くのは当たり前

「猫の夜鳴きがひどくて我慢できない」と、思うあなたの気持ちはわかります。でも、猫が鳴くのは動物だからある意味当たり前です。鳴くのは猫の本能ですし、何かを訴えて鳴いています。猫同士なら夜鳴きしている猫の気持ちを分かってあげられるでしょうが、私たちは人間だから察することしかできません。夜鳴きが困る、というのは人間側の都合だということを忘れないでください。

猫のしっぽから感情を察知する

わたしたちは猫の言葉を理解できませんが、猫のしぐさから感情を察知することはできます。特に猫の気持ちはしっぽに現れ、大きなヒントになります。ただし、しっぽの動かし方には個性があり一匹一匹違うので、以下のまとめは、あくまで一般的な基本形です。まとめの基本形に愛猫のクセを加味して、その時の気持ちを推し量りましょう。

しっぽをピンと立てて近寄ってくる

 
猫の気持ち「甘えたいよー」

しっぽをしっかり立てるのは、子猫が母猫に「世話をして」と近づいていくときのポーズです。飼い主であるあなたに、猫がしっぽを立てて近づいてきたら、子猫が母猫に甘えるように、あなたに甘えたいというサインです。

夜鳴きをしている猫のしっぽがピンとたっていたら、あなたに対して何かをして欲しい、とオネダリしているのかもしれません。猫が何をねだっているか推測して、その願いを聞いてあげるべきか否か判断しましょう。

また、しっぽを立てながらブルブルと振るわせているのも強い愛情表現の一つです。

しっぽが急にブワッと膨らむ

猫の気持ち「ケンカする気か?やってやるぞ!」または「ウギャー驚いた!」

ケンカをするとき、猫は体の毛を逆立て、しっぽも膨らませます。これは、敵に対して実際よりも体を大きく見せようとする行動です。また、何かに驚いたときも、敵からの襲撃に備えて、自分を強く大きく見せる必要があります。

ですから、しっぽを膨らませている猫は、ケンカ前の臨戦態勢だったり、ビックリしていたりする状態です。猫を驚かせるような原因があれば、取り除いてあげましょう。

しっぽを体の下に巻き込んでいる

猫の気持ち「怖い!許してください」「降参です。まいりました」

戦う気持ちのある猫が、相手に対して体を大きく見せようとするのと反対に、戦いに敗れた猫は、小さくなって敵意がないことを示そうとします。姿勢を低くして、しっぽを体の下に巻き込み、自分を実際より小さく見せて「降参するので、もう攻撃しないでください」と相手にお願いをします。ケンカでなくても、大きな恐怖を感じたとき猫はしっぽを巻き込みます。

猫を怖がらせる原因があれば、取り除いてあげましょう。保護猫の場合、保護される以前、壮絶な体験をしている猫もいます。もし、猫がしっぽを巻き込んで鳴いているけど、現在猫を怖がらせるようなものは見当たらない、という場合、何らかのトラウマが猫を襲っているのかもしれません。そのようなトラウマを取り除くことは簡単ではありませんが、ゆっくり時間と愛情をかけて、安心感を与えてあげましょう。

しっぽをユラリユラリゆっくり左右に振っている

猫の気持ち「ゆったりと穏やか~」「いい気分」「嬉しいな」

猫のしっぽは、熟睡している時以外いつも動いています。ですから、左右にしっぽを振っているのはよくあることです。そのうえ、振る速度や強さによって、違った感情を表しています。微妙な感情の違いは、それぞれの猫のクセをよく観察して慣れていくしかありません。しっぽをゆっくり左右に振るとき、うれしい、いい気持ち、といった感情のことが多いでしょう。また、その感情が強ければ強いほど、しっぽを力強く振ります。

もし、夜鳴きしている猫のしっぽが左右に揺れているなら、普段からどのような時にどんなしっぽの振り方をしているのか、よく観察しておき対処に役立ててください。

しっぽを激しく左右に振っている

猫の気持ち「イライラ」「緊張状態で何かを激しく感じている」

猫が激しくしっぽを振っているときは、困った、気持ちが落ち着かずイライラ、といった感情の場合がほとんどです。そしてその感情が強ければ、しっぽは力強く振られています。

夜鳴きする猫が、イライラしているなら、昼間のできごとや寝床、ご飯、遊び足りているか、などイライラの原因を探っていきましょう。緊張している猫には、マッサージも効果的です。猫が嫌がらない程度に、少しずつマッサージしてあげましょう。

保護猫が夜鳴きするときの原因と対処法

猫の気持ちを知るための方法を紹介しましたが、どうしてそんな気持ちになり夜鳴きをしているのでしょうか。もう少し具体的に、よくある夜鳴きの原因と、対処法を考えていきましょう。

猫は夜行性の動物

猫は夜行性の動物ですから、夜間活発に活動します。ところが、人間と一緒に暮らしている室内飼いの猫は、いつしか飼い主と同じ生活パターンに慣れていきます。夜鳴きしている保護猫は、今まで夜は外出したり遊んだりしていたので、夜間活発に活動しているのかもしれません。少しずつ猫の体内時計を昼型に変えていき、「夜は静かに眠る時間」にしていきましょう。

家に慣れていない保護猫の夜鳴き

保護したばかりの人間に慣れていない猫は、ケージに2~3日閉じ込め静かに様子を見守りましょう。少し慣れてきたら、そっと抱き上げたり、静かに低い声で話しかけたりします。野良猫として暮らしていた保護猫なら、触らせてもらえるようになるまで、数日から数週間はかかります。

今までと違う環境にとまどっているのですから、この期間の夜鳴きは、ある程度しかたがありません。人間も神経質になりすぎず、猫と接していきましょう。

家に慣れた猫が外に出たがっている

外に遊びに行きたい、と鳴いている猫。もし、これからずっと室内で飼う予定なら、外出はさせないようにしましょう。家の中で少しだけ遊んであげる、など気を紛らわせて室内の環境に慣らしていきます。

ご飯が欲しい・遊んで欲しい

猫の鳴き方やしぐさが、あなたに甘えていたり、何かをねだるような場合、ご飯が欲しかったり、遊んで欲しかったりするのかもしれません。ただ、猫の要求をすべて受け入れていると、どんどんエスカレートしていく可能性があります。なるべく早い時間に、食事や遊びを終わらせるクセをつけていきましょう。また、夜は遊びで猫を興奮させすぎないよう、気をつけてください

体の不調が原因の夜鳴き

猫は、体調が悪いときに、夜鳴きをすることがあります。夜鳴きがひどく心配な場合、獣医の診察を受けて、原因を確かめておくと安心です。病気が原因でない場合も、精神安定剤などを処方してもらったり、動物心理学専門のセラピストを紹介してもらったりできることもあります。

病気やケガが原因での夜鳴き

夜鳴きをする猫は、甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症、といった病気であったり、他の病気ケガやの痛みで鳴いていたりすることがあります。体調が悪そうな猫や、保護した後健康診断を受けていない猫に関しては、たかが夜鳴きと甘くみず、早めに獣医の診察を受けさせることをおすすめします。

精神的な要因

なんとなく不安で夜鳴きする、というのは人間の子どもと同じく、子猫によく見られる夜鳴きのパターンです。解決のための特効薬はありませんが、不安感を取り除けるよう優しく接してあげましょう。

老猫の認知症

老猫の場合、認知症が原因で夜鳴きをすることがあります。有効な対策はたてにくいのが原状ですが、獣医のアドバイスを聞きながら愛情を持って接してあげましょう。猫を改善するのが難しい場合、防音性に優れたケージや声のひびきにくい部屋を用意する、ご近所に一言ご挨拶しておく、などの配慮も考えましょう。

保護猫特有の夜鳴きの原因

ずっと飼い猫だった猫にも、夜鳴きする猫はたくさんいます。そして、その原因を探し当てるのは難しいものです。保護猫の夜鳴きには、さらに複雑な要因が絡んでいることが多くあります。たとえば、人間に対し何らかの不信感を持っていることや、今までの生活と大きく異なる環境に置かれていることなどが夜鳴きの原因かもしれません。

保護猫がどのような状態で生活をしてきたのか、過去をできるだけ詳しく知っておくと夜鳴きの原因を探る糸口となります。人間になんらかの不信感を持っている場合、一朝一夕に、その過去を消すことはできません。決してあせらず、少しずつ信頼関係を築いていけるよう、猫と一緒に工夫していきましょう。

これはダメ!やってはいけない猫の夜鳴対策

猫を服従させようとして強くしかるのはNG

猫も犬と同じく、しつけをすることはできます。ですから、正しい方法で教えれば、トイレを一定の場所でしたり、爪とぎを限られた場所でしたりできるようになります。ただし、猫は犬のように、服従性が発達していない動物です。猫は、自分が納得したことしかしないので、犬とは違ったアプローチが必要になります。トイレや爪とぎのしつけが成功するのも、猫を上手に納得させることに成功したからです。

夜鳴きのしつけも同じです。鳴いている猫をしかり、鳴きやんだとしても、驚いたり強くしかられたりするのが嫌で、一時的にやめたにすぎません。なんとか鳴きやませようとして、強くしかることを繰り返していると人間のことが嫌いになり、さらに事態が悪化しかねません。

猫の夜鳴きをやめさせるには、態度や鳴き声からなとかその原因を探り、それぞれの猫に応じた正しい対策を講じることが必要です。

声帯除去手術や電気ショックの首輪は本当に必要?

夜鳴きがひどいと、家族の生活に大きな影響がでたり、近所に迷惑をかけたり、といった問題が起こります。苦肉の策として、「声帯除去手術」や「電気ショックの首輪」を検討する人もいます。でも、これらの方法を安易に選択するのは絶対にやめてください。

このままでは飼い続けられなくなるかも、といった深刻な状況でも、専門家や猫を飼っている友人に相談するなどすれば、打開策が見つかるかもしれません。今回の記事も参考に、声帯除去手術や電気ショックではない、夜鳴きの対処法を考えていきましょう。