飼ってからのきょうかしょ

保護猫のケガや病気にどうする?飼い主が考えておきたい「ペット保険」の話

「愛猫が病気やケガになったら、できるだけ良い治療を受けさせてやりたい。」多くの飼い主がそう思うはずです。ところが、ペットには、人間のような健康保険制度がないため、高額の医療費がかかってしまう可能性があります。猫の健康管理に欠かせない健康診断や病気の例とともに、ペット保険について考えてみましょう。

保護猫だからこそ病気やケガには細やかな気配りを

保護猫の生育歴を知っていますか

ペットショップやブリーダーさんから購入した猫は、我が家に来る以前も病気やケガがないよう管理され、体調が悪ければ手当を受けているでしょう。ところが、元野良猫や、様々な事情があり保護された猫は、どうでしょうか。十分な体調管理がされていない猫のほうが多いはずです。

そのため、普通の猫なら手当を受けている先天性の病気や、持病、外傷などについて放置されている可能性が高く、保護された後も発見できていないかもしれません。保護猫は、一般の猫以上に病気やケガ、そして治療について考えておく必要がある、と覚えておいてください。

猫を購入するとペット保険を勧められるのはなぜ?

お店で猫を購入すると、併せて保険を勧められることが多くあります。これは、猫には健康保険がないため、医療費の負担が大きくなりがちなことが主な理由です。もちろん保護猫だって、お店で買った猫と同じように病院通いのリスクあります。

そして、保険を勧められる機会があまりない保護猫の飼い主は、自分で情報を集め判断しなければいけません。いざという時、愛猫が治療に専念できる体制は整っていますか。飼い主の責任として、ペット保険についてよく検討しておきましょう。

年に1回の健康診断で病気を早期発見

健康診断はペット保険の対象外

保険の加入前に、健康診断を義務付けている保険会社もあります。必要でない場合も、心身ともに厳しい状況に置かれていた保護猫にしっかり検診を受けさせ、現在の体調を把握しましょう。保護団体が保護した時点で健康診断を行っていることもありますが、念のため受けておくと安心です。

なお、健康診断の費用は、ペット保険の補償対象となりませんが、愛猫の健康を守るため、年に1度は受診しましょう。年に1回チェックをしておくことで、変化に気が付きやすくなり体調管理に役立ちます。

【基本】最低限チェックしておきたい猫の健康診断項目

 身体検査(体重、体温、心拍数、呼吸数、被毛、眼球、耳道、口腔と歯、口臭と歯肉、心調律、膀胱、歩行の様子など)
 血液全血球検査
 血液生化学検査
 尿検査

若齢期(3歳未満)の健康診断項目

基本の項目に追加して、次のような検査を行うと安心です。
 基本項目プラス以下の3つ
 便検査
 ウイルス抗体・アレルギー検査
 レントゲン検査(腹部・胸部)

成猫期(3~6歳)の健康診断項目

元気な盛りの成猫期の検査項目は、若齢期とほとんど変わりません。「ウイルス抗体・アレルギー検査」については、すでに検査し把握しているなら省いても大丈夫です。

 基本項目プラス以下の2つ
 便検査
 レントゲン検査(腹部・胸部)

中年期(7~10歳)の健康診断項目

少々体に衰えが見えだす中年期。外見からは分からない内蔵系の病気は、早期発見が肝心です。早めに投薬治療など行えば、元気に長生きできる確率が高まります。

 基本項目プラス以下の4つ
 レントゲン検査(腹部・胸部)
 超音波検査(心臓、腹部)
 SDMA(腎機能マーカー)
 フルクトサミン

フルクトサミン(FRA)

長期(2~3週間)の血糖コントロールの指標。検査結果の数値から、糖尿病、甲状腺機能亢進症などの病気がないか診断を行います。

高齢期(11歳以上)の健康診断項目

高齢化が進む近頃の猫たちに、健康診断は欠かせません。老化が進むと、人間と同じく、肘やひざに問題が出やすくなってきます。日頃から、歩行の様子などよく観察しておきましょう。
 基本項目プラス以下の6つ
 レントゲン検査(腹部・胸部)
 レントゲン検査(肘・ひざ)
 超音波検査(心臓、腹部)
 SDMA(腎機能マーカー)
 フルクトサミン
 T4(甲状腺ホルモン)

甲状腺機能亢進症は、中年期以降の猫に多く発症し、年齢が上がるにつれリスクが高まります。老猫は、フルクトサミンの検査に加え、T4(甲状腺ホルモン)の検査も行っておくと安心です。

保護猫がこんな病気になったら治療費はどうする?

健康診断をしっかり受け、普段の生活に気を配っても、病気になる可能性はあります。そして、保護猫が特に気をつけておくべき病気もあります。

肥満は万病のもと

栄養過多や運動不足で、肥満体型の猫たちが増えています。猫はもともと肉食の動物ですから、タンパク質を多く与え、炭水化物はあまり与えないほうがよいとされます。ところが、ペットとして飼われている猫は、その栄養バランスが崩れ肥満となっていることがあります。ちょっとポッチャリで可愛い、なんて甘やかしすぎると、こんな病気を誘発してしまうかもしれません。

糖尿病

猫は犬に比べ、糖尿病になりやすいといわれています。糖尿病にはいくつかの種類があり、原因も様々ですが、肥満が原因となるものもあります。糖尿病になると、細菌感染などの合併症を起こしやすくなるのもこの病気の怖いところです。

いったん糖尿病になると、インスリン注射などの継続的な治療が必要となることもあります。

心臓病

肥満は心臓への負担を増し、心臓病のリスクが高まります。また、首回りに脂肪がつくと、呼吸がしにくくなり、呼吸器にも負担がかかってしまいます。

関節炎

体重が重いと、関節に負担がかかり、関節炎だけでなく、捻挫、椎間板ヘルニアといった病気のリスクが高まります。症状が発症した後も、体を支えるために無理な体勢をとり、さらに別の場所を痛めてしまうこともあります。

年齢とともに増えてくる病気

猫の寿命が伸びてきたのは嬉しいことですが、年を取ると病気と付き合う確率も増えてきます。老齢になると増える慢性病の場合、治療も長期間続くことになるので医療費の備えが必要です。

腎臓疾患

腎臓を患う猫は、とてもたくさんいます。はっきりとした理由は分かっていませんが、経験則的に猫は犬より腎臓病になりやすい、ともいわれています。腎臓の機能が低下すると、食欲不振、多飲多尿、痩せてきて毛づやが悪くなる、といった症状が現れ、最悪の場合、死に至ることもあります。

肝臓疾患

肝臓の働きが悪くなっても、初期のうちはほとんど症状がでません。もう少し悪化すると、毛づやが悪くなりパサつく、吐気、下痢、食欲不振、黄疸といった症状が現れてきます。投薬治療だけでなく手術が必要な場合もあり、高額な治療費がかかることもあります。

膀胱炎・尿石症

多くの猫にみられる病気で、特にオス猫は注意が必要です。猫の体は、水分をあまりとらなくても大丈夫なようにできています。そのため尿は濃縮された状態で、ミネラルが固まり結晶や結石ができやすくなっています。猫の体の構造からの病なので、膀胱炎や尿石症は、高齢猫だけでなく、若い猫も患いやすい病気です。オスの尿道はメスに比べ細長いため、結石が詰まりやすく、重症化もしやすくなっています。

保護猫が気を付けておきたい病気

寄生虫

猫を保護したら、健康診断と併せて必ず寄生虫検査を行ってください。外で拾った子猫や迷い猫、野良猫、といった子を飼う時には特に注意が必要です。便の中に、白く動く瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)を見つけたり、肛門回りや寝床に条虫や回虫が落ちていたりすることもあります。落ちている虫や便があれば、袋に入れ病院に持参してください。

下痢

一時的な体調不良による下痢は、それほど心配はいらないでしょう。元気で心配なさそうなら食事を抜き、2~3日様子を見守ってもいいです。それでも治らない場合、細菌感染や寄生虫、内臓疾患などが原因の下痢かもしれません。

血便

血便は、小腸や大腸などが何らかの原因で出血を起こしている可能性があります。血の色が真っ赤な鮮血なら肛門に近い位置での出血、黒っぽければ口腔や小腸など肛門から遠い位置での出血です。時間が変わると血の色が変色するので、写真を撮って病院に持参しましょう。

ペット保険に入るべき?加入条件は?

こんな人は保険に入らなくても大丈夫

紹介した病気以外にも、がんなどの腫瘍や白血病、猫同士のケンカで感染する猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)、猫かぜなど、猫がかかる病気はたくさんあります。ペットから人にうつる感染症もあるので、必ず治療を受けさせたいところです。

しかし、高額の費用がかかるとしたら、受診をためらってしまうかもしれません。「保護猫の体調が悪そうだな」と感じたら、治療を受けさせることができるよう、費用も含め準備ができていますか。

治療費がどんなに高額になっても、手持ちのお金で支払うつもりだし、支払いが可能だ、という人はペット保険を検討する必要はありません。しかし、それ以外の人は、保険の必要性、どの程度の補償があればいいのか、などについて考えておきましょう。

保護猫でも保険に入れるの?

ペット保険には血統書がなければ入れない、と思っている人もいますが大丈夫です。純血種の猫でないミックス猫も、ペット保険に加入できます。保護猫の場合、年齢がハッキリしないこともあるでしょう。これも、多くの保険では、正確な誕生日が分からなくても、獣医の意見などを元に誕生日の認定をすることができます。

保険に入る前に健康診断を行わなくてはならない、加入時にある一定の年齢以下、といった各保険の求める条件をクリアすれば、保護猫もペット保険を利用することができます。

我が家の愛猫に必要なペット保険の補償はこれ

ペット保険は、補償の内容も掛け金も、それぞれの保険でずいぶん違っています。どんな違いがあるのか、チェックすべきポイントを見ていきましょう。

「通院」「手術」「入院」重視すべきなのはどれ?

病院での治療の多くは、通院で行われます。ですから通院補償がついていると、保険を利用できる機会が増え、たびたび保険のメリットを感じられます。長期の通院が必要な慢性病にかかったような場合、通院補償があれば安心して治療を続けることができるでしょう。ただし、通院補償をつけると、掛け金は割高になりがちです。また、通院の費用なら自分で用意できる、と考えるならそれほど大きな補償は必要ないかもしれません。

手術、入院は、通院に比べると発生頻度が低くなります。そのかわり、一旦必要になるとある程度まとまった大きな金額になってきます。万が一の時、どの程度までなら自分で用意できるかをふまえ、必要な補償額を決定しましょう。

免責額・最低診療費・費用の補填割合

保険によっては、免責額、最低診療費、といった形で、決められた一定の額より少ない場合保険金が支払われなくなっています。また、かかった診療費の100%を負担してくれる保険もあれば、50%補償のものもあります。

近くに保険を使える病院はあるか

入ろうと思っている保険は、猫が通う動物病院が支払い対象になっていますか。また、保険金支払い方法は、請求後後日返還されるのか、病院の会計窓口で支払う時保険で補償される額を差し引くのか、といった条件も確かめておきましょう。

年齢が上がった時の保険料はいくら?

年齢が高くなると病気になりやすく、保険の必要性が増してきます。ただ、年齢が高くなるほど保険料も高くなるのが一般的です。高齢となり保険が必要になった時、支払い続けることができる保険料なのか、確認をしておきましょう。

保険金請求をするとどうなる

保険によっては、保険金を請求すると、更新時に保険料が上がったり、特定のケガや病気が補償対象外になったりすることがあります。安心して保険を請求するためには、加入時だけでなく、更新時の条件も大切です。

その病気やケガ補償の範囲内?

治療期間が長くなり、費用が多くかかりそうな病気やケガ、猫によくある病気やケガ、について補償の対象外とされていることがあります。補償される場合も、一定の待機期間を求められる保険もあります。どのような病気やケガを対象として保険金が支払われるのか、確認をしておきましょう。