飼ってからのきょうかしょ

猫が自分の体を噛むのはグルーミング?それとも病気?

寝て起きてまた寝る。猫は、1日の3分の2の時間寝ているから、「寝る子」がネコの語源という説もあるほどです。そして、起きているときにはかなりの時間を、自分の体をなめて毛づくろいをすることに費やしています。猫がグルーミングしている様子を見ていると、時々体を強く噛んだり、引っ張ったりしているようです。これは、身だしなみを整えているだけなのでしょうか、それとも何か病気のサインなのでしょうか。猫のグルーミングと体を噛む理由について、解説します。

猫のグルーミング

猫にとって皮膚はこんなに大切

猫の全身は、毛が密生した皮膚でおおわれています。猫の皮膚は、外傷から猫を守り、体温の保持、体内の水分を守る、細菌やウイルスが侵入するのを防ぐ、といった大切な役割を担っている器官です。他にも皮膚には、髭などの毛で外界との距離を測ったり、熱さや冷たさ痛さなどを感じ取り危険を察知したり、といった役目もあります。

猫にとってとても大切な皮膚ですが、外部に直接接していますから、汚れや細菌、ノミやダニといった寄生虫がつきやすくなっています。皮膚の健康を守るためには、グルーミングでのお手入れがかかせません。そのため猫は、熱心に毛づくろいを行っているのです。

グルーミングの効用

体をなめて、被毛についた汚れや臭いを取るのがグルーミングの目的です。でも、それだけではありません。子猫のころ、グルーミングを行ってくれていたのは母親でした。母親からなめられることは、体調を整えてもらうだけでなく、安心感と幸せな気分を味わえるひと時です。

そんな母親とのスキンシップを思い出しながら、自分で自分にスキンシップを与えているのがグルーミングの時間です。グルーミングにはリラックス効果があるため、猫は毛づくろいが終わると自然と眠りについてしまいます。

人間がなでたり、上手にグルーミングしてあげたりするのも、猫にリラックス効果を与え、信頼関係を強めるのに役立ちます。ときには飼い主が、全身チェックも兼ねて優しくグルーミングをしてあげましょう。

猫が自分でする毛づくろい

砂漠出身で水が嫌いな猫ですが、とてもきれい好きな動物です。そのため、自分で毛づくろいをしますが、体が柔らかいのでほとんど全身をケアすることができます。

ケアに使う猫の唾液は、消毒作用があり猫用のシャンプーのようなものです。猫の舌はザラザラとして引っかかりがあり、クシのような役目を果たしています。唾液シャンプーをしながら舌のクシで抜け毛やフケを取り除き、ピカピカの被毛ができあがります。

クシ代わりの猫の舌

猫の舌がザラザラしているのは、小さなトゲがビッチリ舌に上に並んでいるからです。ザラザラに、抜け毛やほこりが引っかかり、体を清潔に保つことができます。水を飲むときや、獲物を食べる時にも、すべりにくいザラザラとした舌はとても便利です。

グルーミングで毛を飲み込むと、すべてを消化することはできません。よく猫は毛玉を吐きますが、吐くと体力を消耗します。ですから、体力のない猫や大量の毛玉を吐く猫は、少し心配です。

飲み込んだ毛玉がそれほど多くなければ、自然と排泄物として出てきます。毛玉を体外に出す方法としては、これがベストです。毛玉をウンチとして出すフードも市販されているので、検討してみてください。

危険なのは、毛玉がお腹にたまってしまうことです。体の外に出せなかった毛玉が、胃や腸にたまると、様々な不調を引き起こします。これを、毛球症(もうきゅうしょう)といい、食欲不振、吐き気、便秘、といった症状がサインとして現れます。

猫が大量の毛を飲み込ませないためにも、普段からブラッシングをしっかり行い、抜け毛を減らしておきましょう。

自分でグルーミングが上手くできない猫

猫は自分で毛づくろいできますが、人間のお手伝いが必要な場合もあります。

長毛種の猫

猫の原種、砂漠で暮らしていた猫の毛は、短く自分で手入れをすることが可能でした。これに対し、毛の長い品種は、人間の好みで改良をされ品種改良により作りだされた猫です。猫が自分でグルーミングするだけでは、長い毛を完璧に手入れすることはできません。飼い主がグルーミングを手伝ってあげましょう。

長毛種の猫には、丁寧なブラッシングが必要です。毛並みに沿ってしっかりととかし、毛玉になりやすいわきの下やシッポは、クシを使って丁寧にすきます。毛が絡まったままシャンプーをすると毛玉ができてしまうので、ブラッシングをしてから洗います。取り切れない毛玉は、あらかじめクシやバリカンで取り除いてからシャンプーをしましょう。

自分でグルーミングが上手くできない猫

自分でグルーミングができなくなった猫は、人間が手を貸してあげる必要があります。太って全身をなめることができなくなったり、病気で動きにくくなったり、高齢で認知症気味の猫などは、上手にグルーミングができません。

反対にいえば、グルーミングを自分でできない猫は、何らかの不調があるのかもしれません。毛づやが悪くなった、臭いがする、など猫がグルーミングを上手にできていないサインがあれば、健康状態を観察してみてください。

【心配なし】猫がグルーミング中に自分を噛む理由

猫にとってグルーミングは、心身を健康に保つため欠かせない行為です。ところが、舌でなめるだけでなく、自分の体を噛んでいる時があります。グルーミング中に、噛む行為はどのような意味があるのでしょうか。

気持ちよく強めにグルーミングしている

毛づくろい中、猫が自分を噛んでいると、心配になりますよね。でも、猫が気持ち良さそうに体を噛んでおり、グルーミング後にチェックして体に異常がなければ、心配はいりません。強めにマッサージをして、体に刺激を与えているようなものです。ただし、何度も同じ場所を噛んでいる場合は、その部分に何らかの異常がある可能性があります。

毛玉を噛み切っている

猫の毛が絡むと、毛玉ができてしまいます。毛玉は消化できないため、大量に飲み込むと健康を害しかねません。また、皮膚に絡んで皮膚を傷めることもあります。そのため、猫は自分で毛玉を噛み切って、グルーミングを行うことがあります。

人間が毛玉を取ってやるときは、クシやバリカンを使うと安全です。ハサミを使って下毛にできた毛玉をとろうとすると、皮膚を切ってしまうことがあるので気をつけてください。

【要注意】猫がグルーミング中に自分を噛む理由

皮膚炎がありかゆみを感じている

イライラしたような様子で皮膚を噛んでいるときは、かゆみを感じているのかもしれません。噛んでいる部分の毛が抜けている場合、ノミアレルギーや、なめすぎによる皮膚炎(舐性皮膚炎・しせいひふえん)、細菌感染などが疑われます。

寒い時期には、室内が乾燥しすぎて皮膚の表面が荒れ、フケがたくさん出てかゆみを感じている場合もあります。この場合、加湿器などを利用して肌の乾燥を防ぎましょう。また、食物アレルギーによって、かゆみを感じることもあります。

ネコノミ・ヒゼンダニなどが寄生してかゆい

ネコノミ

ネコノミが寄生すると、猫は強いかゆみを感じ、しきりに体をなめたり、噛んだり、爪で引っかいたりします。ひどくなると、発疹がでたり、脱毛をおこしたりすることもあります。ネコノミは猫だけでなく、人間も刺すため、飼い主に発疹やかゆみがでてノミに気がつくこともあります。

ヒゼンダニ

丸いヒゼンダニは、短い足で猫の皮膚表面に穴をあけ、寄生します。ヒゼンダニに寄生された部分は脱毛したり、かさぶたができたりし、強いかゆみを伴います。そのため血が出るほど噛んだり、引っかいたりすることもあり、さらに症状を悪化させることがあるので早めに対処しましょう。

ストレスを感じている

グルーミングにはリラックス効果があるため、ストレスを感じた猫は、気分を落ち着かせるために毛づくろいすることがあります。軽いストレスを解消するためにグルーミングを行っている場合は問題ありません。

しかし猫が、同じ場所をなめ続けたり、自分を強く噛んだりしている場合は注意が必要です。強いストレスを感じてグルーミングを行っている猫は、前足、腰、背中などの一か所を、皮膚炎を起こすまでなめ続けたり、噛んだりすることがあります。ストレスの原因を考え、できるだけ取り除いてあげましょう。

もしかしたらこれ?体を噛む猫のストレス

飼い主との関係
  • 目を見て叱る(目をそらせる猫のマナーに違反しています)
  • 猫かわいがりしすぎ(自由気ままに行動したいのにベタベタされすぎるとイライラ)
  • こんな遊び方はイヤ!(大声で驚かす、袋をかぶせられる、追いつめられる)
環境の変化
  • 引越しした(不安だ・・・でも、慣れてきて自分の居場所ができればOK)
  • 家族構成が変わった(好きだったお姉ちゃんがいなくなった、赤ちゃんがやってきた)
  • お客さんがきた(自分のテリトリーに入ってくるなんて!)
  • ペットホテルに預けれらた(自宅でシッターさんに来てもらう方がストレスは少ない)
    猫の問題
  • 発情期(相手もいないしイライラ)
  • 同居猫との相性(相手がいるだけでストレス)
  • なんらかの病気による体調不良(病院に連れて行ってね)